がん診療体制について
当院のがん診療体制
がん治療に対する当院外科の姿勢
治療は原則的にがん診療ガイドラインに示されている標準治療に従って行なっています。しかし癌の病態は画一的なものとは限らず、年齢や全身状態に応じてそれ以上に効果の期待できる治療法があれば最新の知見をもとに提示し手術、化学療法とも患者さんの希望に沿える方針を検討します。
診療体制
外来は月~金曜の午前、外科外来にて受け付けています。手術が必要であると予測される消化器内科の患者さんも随時外科へお回り頂いています。外来/入院共通の担当主治医のほか、病棟では4名のスタッフでチーム診療を行ないます。退院後も各主治医が定期的に診察し通院治療を行ないます。腹腔鏡手術や肝臓・膵臓の手術、血管の合併切除/再建を必要とする複雑な手術などに関しても対応しています。
診療対象疾患
当科で手術を行なっている疾患です。胃癌・大腸癌・直腸癌・十二指腸乳頭部癌・肝臓癌(肝細胞癌、転移性肝癌、胆管細胞癌)・胆嚢癌・胆管癌・膵腫瘍(膵癌 粘液産生性膵腫瘍 内分泌腫瘍)・乳癌。
①胃内視鏡 ②大腸内視鏡 ③CTスキャン ④腹部エコー ⑤MRI ⑥胆管、膵臓系の疾患は内視鏡的逆行性造影(ERCP)。基本的に前処置不要な①③④は受診当日でも対応可能です。
検査、入院体制について
消化器内科との連携で比較的早い対応をとります。内科で入院された患者さんも必要に応じてすぐに外科転科できるシステムをとっています。診断がついた患者さんはできれば翌週に手術が実施できるように努めています。通常、入院は手術の1~3日前です。癌の進行度により検査を含めて早期入院していただくこともありますが早期癌や進行が緩やかな癌腫の場合はご希望に合わせて日程を調整します。特に治療を急ぎたい方もご相談いただければ対応致します。
国立がん研究センターの画像診断コンサルテーションについて。肝臓、膵臓、胆管などのいわゆる診断が難しい癌ではCTの結果についてオンラインシステムを使用して読影してもらうことが可能です。いわゆる「セカンドオピニオン」的なものです。患者さんのメリットは 1)東京まで受診しなくても済む。2)そのために早い。3)患者さんは無料。です。(現在県内でこのシステムを利用できるのは国立病院機構である当院のみ)。
手術について
定時の手術日程は月・木の週2日ですが、火・金も行なっています。病状に即して柔軟に手術を予定します。腹腔鏡下手術についての話題はこちらへリンク <<外科治療の広がり、この1年>>。転移性肝癌、胆管細胞癌、胆管癌、膵癌など難しい病態についても、根治が望める場合は積極的に切除を行っています。特に最近は化学療法(抗癌剤治療)との組み合わせで良好な治療成績が得られています。例えば①切除不能と判断されたが化学療法にて縮小を図り手術が可能となる、②肝臓の転移が広範に多発している場合などに抗癌剤治療を行なった後2段階で切除を行なう、③切除後に化学療法を行って再発を防止する、などです。最新の知見をもとに積極的治療を実施できる体制をとっています。
平成22年度の全手術件数は196件で、うち胃、大腸、直腸など消化管のがんに関連するものは47件、肝胆膵のがんに関連するものは13件、乳癌は5件でした。
化学療法について
化学療法の多くは外来通院で可能ですがご希望や副作用の状態により2泊3日程度の定期的短期入院での治療も可能です。切除不能な病態に対する治療としての化学療法、手術後の再発防止への術後補助療法、再発に対する治療に分けることができますが、いずれの場合も基本的に外来治療が可能です。通常の流れは受診受付後にすぐに採血検査を受けていただき約45分で結果が出ますので診察後、治療へと移行していただきます。定期的なCT検査なども治療当日に合わせて予約可能です。
当院で実施されている化学療法
(大腸・直腸癌)FOLFOX療法、FOLFILI療法、 XELOX療法、SOX療法、UFT/ユーゼル、TS-1+イリノテカン。(これらには適宜ベバシズマブやセツキシマブなどの血管新生阻害薬の組み合わせあり。)
(胃癌)TS-1、イリノテカン、TS-1+シスプラチン、パクリタキセル、トラスツマブ。
(膵癌、胆道癌)ジェムシタビン、ジェムシタビン+TS-1、TS-1。
抗癌剤投与を行なうための中心静脈ポートの留置手術については随時行なっています。日帰り外来手術でも留置可能です。リンクはこちら<<皮下埋め込み型リザーバーの御案内>>。
転移性肝癌 / 肝癌、胆嚢癌、胆管癌について
転移性肝癌
多くは大腸・直腸癌からの転移ですが胃癌からの転移もまれに切除の対象になります。切除ができれば化学療法との組み合わせで良好な経過が期待できます。切除不能な場合、まず化学療法で縮小させてから手術を考慮します。また術後も化学療法で再発防止に努めます。大腸癌と肝臓の転移が同時に発見された場合はできる限り一度の手術で両方を切除します。術後の化学療法へと速やかに移行できるように配慮しており、一度に切除するによる患者さんへのデメリットはみられていません。切除の基準は個数には関係なく、切除後に残る肝臓の量や機能で判断します。
☛大きく肝臓を切除しなければならない場合、手術に先立って切除する部分の門脈という血管の血流を止める高度な技術(門脈塞栓術)を要します。患者さんのご希望がある場合は同じ国立病院機構である国立癌センター東病院の専門医師によりこの手技を受けていただくことが可能です。
膵癌、胆嚢癌、胆管癌
悪性度が高い反面頻度が少なく発見、診断、治療が難しい疾患です。診断後はできるだけ早い手術が望まれるため検査を速やかに実施し、いたずらな入院待ちや手術待ち期間がないよう優先的に対応すべき疾患として取り扱っています。(特に黄疸が顕著な場合、胆汁ドレナージを急いで行なう必要があります。)病巣の範囲を正確に診断することが難しい癌ですので、1mm間隔の精度の高いCTスキャン画像を立体的に構築し詳細に検討します。手術には重要な血管の合併切除/再建を伴うことがありますが積極的に切除を行なう方針をとっています。手術より化学療法を優先的に行なうべきステージの患者さんにはジェムシタビンという抗がん剤を基軸にした治療を行います。